精神科ブログ

2017年5月実習

実習2日目。涙を流しながら話す患者さんに対して自分はティッシュを渡して「大丈夫ですよ。」と言う他なかった。ここは精神科の外来だ。そう思うとより一層言葉でのアプローチが難しかった。目の前には体は健康なのに苦しんでいる人がいる。自分の仕事は予診を取ることだが、それさえロクにできなかった。予診は悩み相談室とは違う。心を診る精神科に憧れながらも、どこかで精神科を軽く見ていたのかもしれない。

 

初診の患者さんを診る際には、主訴からどういう疾患が妥当か考え、その診断基準を満たすかどうか判断できるような質問を限られた時間に行わなければならない。患者の生活史も注意深く聞く必要がある。それと同時に器質的原因を否定するために血液検査やMRIの依頼もする。しかし何より重要なことは、患者さんを疲れさせないようにスムーズに行うことである。

他科のように検査値や画像を見て診断が付くほど精神科は機械的ではない。精神科領域の専門用語が難しいのは、各患者さんの僅かな症状の違いを区別するためにあるということを実感した。認知症、うつ病、うつ症状、気分変調症、適応障害、境界性パーソナリティ障害、似ているようで全然違う。これらの鑑別点は患者さんとの対話の中でしか見つけることができない。そして患者さんの話だけでなく表情、整容、仕草も観察する必要がある。

毎日予診を取らせて頂く中で気付いたことがある。予診の後は先生に引き継ぎ、先生が問診を始める。予診で十分聞いたはずなのに、先生が問診すると新しい話が次々と出てくる。注意深く問診を観察し続けたが結局その秘訣は分からないままだった。先生の質問の仕方に工夫があるというより、患者さんが自発的に話し始めているような印象を受けた。患者さんが話しやすいような雰囲気、声のトーン、表情、沈黙さえも、その全てが精神科医の技なのかもしれない。

 

感想は山ほどあるのですが、キリがないのでこの辺にしておきます。

本当に実になる実習でした。2週間、ありがとうございました。

                            東海大学6年 和田 悠佑