精神科ブログ

あづみ病院精神科での実習を終えて(平成29年2月6日~3月2日)

「これが精神科病棟の鍵です。失くしたら全部取り換えになるので、えらいことになります。」事務のお姉さんが淡々と説明する。実習初日から衝撃を受けた。病棟の鍵を管理することなどもちろん初めての体験であったし、もし失くしたら・・・と考えるととても恐ろしかった。
あづみ病院精神科の実習の特徴といえば、なんといっても外来で予診をとることだ。毎日新患の予診をとり、その後医師の診察に陪席する。なんだか落ち着かない、うつっぽい、酒がやめられないなど患者さんの訴えは様々であった。自分一人で予診をとることは初めての経験でとても不安だったが、先生方に「予診で一番大切なことは、漏れなく聞くことよりも患者さんを疲れさせないことだ」とアドバイスを頂き、気が楽になった。最初の週はアナムネをとることで精一杯だったが、慣れてくると鑑別疾患も考えながら問診できるようになってきた。当科には個性豊かな8人の医師がおり、一人ひとり違ったスタイルがあり、患者さんとの接し方について多くのことを学んだ。
他にも、措置入院の瞬間を間近で見学したり、近隣の老人ホームに往診に行ったり、外科志望の私に、術後せん妄の患者さんや入院中に急性虫垂炎になった患者さんを診察させていただいたりと、とても充実した1ヶ月であった。
精神科医は「理屈っぽいわりには治療力が低く、単なる観察をして哲学を論じるものというイメージ」(標準精神医学 第6版.1章 精神医学とは より引用)が一般的にあるかもしれない(私は思っていない)が、それは間違っているということを主張したい。精神科医は患者さんの身なり、言動、行動を細かく観察し、精神状態を深いところまで考え、それを医学用語として言語化する能力に長けている。治療方法は薬物に限らず、傾聴や対話など他科の医師には無いものを持っている。また、精神科は医師だけでなく、看護師、作業療法士、ケースワーカーなど、多くの職種が活躍していることを実感した。1ヶ月の実習で病棟の鍵を開けることにも慣れ、精神科のリアルガチな現場にどっぷり浸ることができた。
精神科の先生方をはじめ、外来、病棟のスタッフの皆様、困っているときに声をかけてくださったり、熱心に指導してくださったり、1ヶ月お世話になりました。ここで得た経験は将来自分がどの科に進んでも役立つと思っています。本当にありがとうございました。
信州大学医学部5年 吉池奏人